中国の言い伝えによりますと、老子は紀元前6世紀の人物とされます。春秋時代に当たります。でも、あまりにも言い伝えが多くて、老子が実在の人物なのかどうかすら疑われています。老子は、神話上の人物という意見だったり、複数の歴史上の人物を合わせた人物だという説だったり、歴史専門家の意見も様々です。でも、「史記」を書いた中国一の歴史家、司馬遷が老子の伝記を書いています。と言うことは実在の人物として認めたわけですね。
「史記」によりますと、老子は、姓は「李」、名は「耳」,字は「耼」。現在の河南省にあたる楚の国の出身です。周の国の書庫の管理者だったということです。書庫の管理者って、今風に考えると、国立図書館の館長みたいですよね。老子はある時、周の国勢が衰えるのを感じ、仕事をやめて牛の背に乗って西に向かいました。函谷関を通り過ぎる時、関守の尹喜(いんき)の求めに応じて、上下二巻の書を書き上げました。その書はもしかして、現在に伝わる「道徳経」なのです。老子のすべての思想を綴ったものです。その後、老子は関を出ました。その後の行方を知るものはいません。